くらし

vol.05 「このまちで、生きていく」。家と家族と住む場所と。
(中古住宅/長野市リノベーション事例)

長野市・Tさん

東京・埼玉から移住し、中古住宅をリノベーションして暮らすTさん家族。
バス通りに程近い築50年の住まいは庭にたくさんの草木が育っていて、身近に四季がある環境。子どもたちが大好きな虫たちも、たくさん遊びに来ると言います。まち場の住宅地ながら、どの家にも緑があってまちが流れるリズムもどこかゆったり。「中古住宅でなければ、ここには出会えなかった」と話すTさん家族の、家づくりの軌跡の日々の話をうかがいました。

リセット。

「ここでずっと。は、無理だなと感じていたんです。夫も私も」。
そう話すのは、東京でファッション関連の仕事をしながら子育てをしていた奥さま。子どもが生まれ保育園に送り迎えするようになると、満員電車で通勤しながら家事・育児をこなすように。平日の大変さは最たるもので、毎日が綱渡り。夫婦ともにいっぱいいっぱいで、家族で過ごす時間はほとんど取れなかったと言う。

長野・岡山と田舎育ちの夫妻にとって、さらにストレスだったのが人の多さ。
「休日ぐらいはと思っても、どこに行っても人でいっぱい。近所の公園すら人が溢れていて、気が休まらなくて。これは生活環境を変えてどこかでリセットする必要があるな、と思うようになったんです」。

移住するなら早いほうがいい。
そう考えた夫妻は、たびたびリフレッシュに訪れていたご主人の実家のある長野への移住を決めると、アパートに転居。新たな土地での暮らしをスタートさせた。


このまちで、生きていく。

長野に越した当初は、あまりの違いに戸惑うことも多かったという。奥さまは、「店の数や人との距離感の違いにたじろいで、東京を懐かしむ気持ちも強かった」と笑う。その後運転免許をとって活動範囲が広がると、いつの間にか東京を懐かしむ気持ちも薄れ、自然と長野に馴染むように。四季折々変化する山の景色に癒され、いつも遊びに行く公園は家族のお気に入りになったと言う。そしていつしか、「家を持つこと」を具体的に描くようになった。

悩んだのが、どこに家を持つか。
「当初は眺望のいい山手も考えたけれど、通学や年齢を重ねた後のことを思うと自信がなくて。予算を考えるなかで、町場の中古住宅もいいんじゃないかと思うようになったんです」。
ところがなかなかコレと言う物件に出会えないまま、探すこと2年。こだわりを持たず、「出てくる物件次第」と柔軟なスタンスでいたところ、出会ったのがこの家。相談を持ちかけていたまつけんのリフォームの紹介だった。

「この家を見にきた時、自然とこのまちに暮らすイメージが湧いたんです。緑もあって、まちに落ち着きもあって。安心して年を重ねていける気がして、ここに根を張って生きていこうと思いました」。

(リノベーション前。購入を決めた時の住まい)

日々

この家に越してもうすぐ一年。新築の家に比べてずっと広い築50年の家は、子どもたちをより自由に、のびのびさせているという。

「連休に、2階の子ども部屋をセルフリノベしたんです。少しだけですけど」。
リノベーションでは敢えて手をつけなかった2階の2室は、昭和レトロなかつての空間がそのまま残る。夫妻は子どもが留守にしていたタイミングを見計らい、押入れを加工。子どもたちの秘密基地に仕上げた。今やすっかり子どもたちのワクワクゾーンになっている。
「個室として本格始動するのはまだ先。子どもたちが成長した後また空き部屋になると思えば、自分たちで楽しみながら、自由に考えていけばいいと思って」。

広い庭の一角には、かつての住人が植えた樹木や山野草が残る。
「先代の方が何十年もかけて育てたいのちを受け継げるって、ありがたいし、素敵なことだなって思います」と奥さま。「自分たちでゼロから始めたら、こうして楽しめるのは何年も先。自分では植えないような草花に出会えるのも楽しいし、知らない芽が顔を出すとこれはなんだろうって観察するのも楽しい」。敷地西側に植わるドウダンツツジは、奥さまお気に入りのひとつ。時折活けては室内を彩るものとして活用している。

庭には新たに菜園もつくった。ご主人が整備した “一坪菜園”には、奥さまが手入れするニンジンやカブ、ルッコラなど、さまざまな野菜が少しずつ植わる。すぐ隣には、ご主人お手製のコンポストも。畑と土の、いい循環ができているという。庭につきものの虫は、虫好きの     子どもたちにとっては大興奮の的。畑いじりをする奥さまの隣で子どもたちが夢中で虫を観察している姿は、もはや日常の風景になった。親子で土に触れ、自然と共にある時間が愛おしい。

「最近、いい焙煎屋を見つけたんですよ」と言って、ご主人がコーヒーを淹れてくれた。夫妻でまちを散策していたら、個人で営業している小さなコーヒー豆の焙煎店を見つけたという。「案外、色々発見があるんですよ。住んでみると」。
家をきっかけに移り住んだ新たなまち。夫妻は、ずっと“大切にしたかったもの”を手に、家族とかけがえのない日々を紡いでいく。

この家の実例をみる

竣  工:2024年3月
家族構成:ご夫婦・お子さま2人

 

– snap photo gallery –


家の隣の小径には、大きな桜の木が植わる。「それもこの家のお気に入りのポイント」。


かつての玄関アプローチにはドウダンツツジや紅葉が植わる。ツワブキなどの山野草も。


庭先につくった“1坪菜園”。16マスに区切り、色々な野菜を少しずつ育てている。


たくさんの服をお持ちの夫妻。広い家を生かしてたっぷり容量のクロークは2箇所。広いランドリールームも別にあり、広さのある家を生かしている。


“階段猛ダッシュ”すらも楽しい。笑


新たな家で、愛おしい親子の時間がが紡がれていく。